日本脳卒中協会は脳卒中予防啓発を目的に「脳卒中予防十か条」を作成し、市民講座等の様々なシーンで活用してきました。
脳卒中は予防のみならず、発症後は、再発予防のための“治療の継続”と“リハビリテーションの継続”も重要です。そこでこの度、脳卒中後も再発を防いで活き活きした人生を送るための「脳卒中克服十か条」を作成しました。脳卒中患者さんや家族が、脳卒中を克服する一助になればと願っています。
「脳卒中予防十か条」とともに「脳卒中克服十か条」も活用ください。
- 生活習慣 : 自己管理 防ぐあなたの 脳卒中
- 学ぶ : 知る学ぶ 再発防ぐ 道しるべ
- 服薬 : やめないで あなたを守る その薬
- かかりつけ医: 迷ったら すぐに相談 かかりつけ
- 肺炎 : 侮るな 肺炎あなたの 命取り
- リハビリテーション : リハビリの コツはコツコツ 根気よく
- 社会参加 : 社会との 絆忘れず 外に出て
- 後遺症 : 支えあい 克服しよう 後遺症
- 社会福祉制度: 一人じゃない 福祉制度の 活用を
- 再発時対応 : 再発か? 迷わずすぐに 救急車
「脳卒中克服十か条」作成の経緯
日本脳卒中協会は、脳卒中の予防啓発のために、平成15年に「脳卒中予防十か条」を作成し、その後、番外編として「お薬は 勝手にやめずに 相談を」を加え、市民講座など様々なシーンで使用してきました。脳卒中は予防のみならず、発症後は、再発予防のための“治療の継続”と“リハビリテーションの継続”も重要です。そこでこの度、脳卒中になった患者さんや家族向けの「脳卒中克服十か条」を作成しました。
「脳卒中克服十か条」の内容
「脳卒中克服十か条」に盛り込む内容については、機関誌JSA News編集委員会で検討し、次の十項目が選ばれました。
- 生活習慣:再発予防には、禁煙、塩分・脂肪分控えめの食事、運動、節酒が重要です。
- 学ぶ:再発予防方法、後遺症対策、リハビリテーション、再発時の対応、薬の飲み方や副作用などについてよく理解することが大切です。
- 服薬:再発予防のために、必要に応じて抗血栓薬(抗血小板薬や抗凝固薬)、高血圧・糖尿病・脂質異常症治療薬の内服を継続することが不可欠です。スウェーデンの報告によると、脳卒中発症後2年の時点で退院時に処方された薬剤を継続内服している患者の割合は、降圧薬74%、抗血小板薬(抗血栓薬)64%、スタチン(脂質異常症治療薬)56%、ワルファリン(抗血栓薬)45%と、かなり低いことが分かっています*。 * Glader, E. L. et al.: Stroke 41:397-401, 2010
- かかりつけ医:普段はかかりつけ医にきめ細かく診てもらい、必要に応じて、専門医に紹介してもらいましょう。
- 肺炎:肺炎は脳卒中後の主な死因の一つです。ワクチン、感染対策、誤嚥予防で肺炎を予防しましょう。
- リハビリテーション:機能回復、機能低下の予防、社会復帰のために、リハビリテーションを継続しましょう。
- 社会参加:外出、旅行、患者会などへの参加、復職などにより、社会との絆を持ちましょう。
- 後遺症:うつ状態や痛み(痺れ)などの後遺症について、かかりつけ医に早めに相談し、改善を図りましょう。
- 社会福祉制度:介護保険、身体障害の認定など、社会福祉制度をうまく利用しましょう。
- 再発時対応:脳卒中の再発率は高く、クモ膜下出血、脳出血、脳梗塞の10年間の累積再発率は、それぞれ70%、56%、50%と報告されています**。再発予防と、再発時の迅速な治療が大切です。症状を覚えて、疑ったら、すぐに救急車呼びましょう。 ** Hata J, et al: J Neurol Neurosurg Psychiatry 76: 368-372, 2005
公募と選考結果
項目ごとの標語を公募したところ、総数817件のご応募をいただきました。ご応募頂いた方々に感謝申し上げます。 日本脳卒中協会の支部の意見をもとにJSA Newsの編集委員5名で予備審査を行い、2月17日の審査委員会で審査を経て、各項目の文言が決まりました。作者は、第1・4条は中川潔さん、第2・6・8・10条は梅山すみ江さん、第3条は永野弘子さん、第5条は岡埜陽香さん、第7・9条は伊藤弘子さんです。