脳卒中体験記「夫がくれた感謝と勇気」

日本脳卒中協会では、ご自身またはご家族が脳卒中になられた体験を持つ方の体験記「脳卒中後の私の人生」を募集し、毎年発行しています。

平成16年度は、松本まさ枝さんの「夫がくれた感謝と勇気」が、優秀賞に選ばれました。

夫がくれた感謝と勇気(松本まさ枝さん作)

 平成三年七月突然夫が倒れたのです。場所は炎天下の家庭菜園でした。二時間余りもその発見がおくれ、救急車で病院へ運ばれた時には、脳梗塞が左脳を掌大にまで広げてしまっていました。

 保存的療法で見守るしかなく、何日も意識は戻りません。生きているのか死んでいるのか、私自身が思考能力を失って、只付き添っていました。そんな私に飛び込んできた若い医師の言葉は「普通死んでも当たり前の状態で運び込まれた患者です。今たしかに生きています。御の字だと考えてください」と、大きな声でした。

 その時夫は六十五才、私が六十四才で、若い時からの共働きはそれぞれ無事に定年を迎えていました。そして生活の設計通りに豊かな老後が始まったばかりだったのです。働き抜いて賢明に育てた二人の男の子は、共に東京の大学を卒業し、社会人として生活の基盤はしっかり東京に築いてをります。

 従って夫の介護は、妻である私の責任であり、義務なのだから住み慣れたこの福知山の我が家で頑張っていこうと強く心に決めたものでした。東京は遠くても、長男・次男、その嫁さん達が、温かく心を通はせてくれるのを強い味方と考えれば、全く先の見えない介護の日常も、私ひとりで何とか踏ん張ってゆける筈です。

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