脳卒中体験記「失語症合唱団のキャプテン」

日本脳卒中協会では、ご自身またはご家族が脳卒中になられた体験を持つ方の体験記「脳卒中後の私の人生」を募集し、毎年発行しています。

平成17年度は、井上ちづ子さんの「失語症合唱団のキャプテン」が、優秀賞に選ばれました。

失語症合唱団のキャプテン

 お父さんが大きな口を開けて歌っている。胸を張り、笑みを浮かべながら力強い歌いっぷり。こんな日が来るとは、あのとき家族の誰が予想できたでしょうか。

 発病は昭和六十一年十月十三日、五十三才の誕生日が過ぎて間もないときでした。病名は「脳動脈瘤破裂」、いわゆるクモ膜下出血といわれるものでした。八時間もかけて大手術を受けました。手術は成功しましたが、医者からは

「命が助かっても植物人間です。十日ほどヤマです。残念ですが、99%は駄目でしょう。残る1%は家族で祈ってください。」

と説明され、私たち家族は祈ることしかできませんでした。

 恐れていた「血管れんしゅく」が起き、何日も高熱が続きました。熱を下げるために体にエタノールをかけていたあの光景は今でも忘れることはできません。頭の骨は太ももに埋め込まれており、気管切開をして人工呼吸器をつけていました。腕や足、胸に何本もの点滴の管がつながれた状態で最初の十日間が過ぎていきました。

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