患者さんのための新型コロナウイルス感染症(COVID-19)情報

Q.コロナウイルス感染が脳卒中の原因となることはありますか?

A.新型コロナウイルス感染症は脳卒中を起こしやすくなる可能性があります。

中国から世界へと拡大した新型コロナウイルス感染症ですが、当初、重症肺炎を引き起こす疾患として認識されていました。しかし、次第に全身に病気を起こすことも報告され、脳卒中を含む血管の病気との関連も指摘されるようになりました。流行初期は2.8~5.8%と比較的高率に脳卒中を発症してしまうといわれていましたが、情報が整理され、新型コロナウイルス感染症の患者さんの脳卒中発症率は、1%前後だろうといわれています。

なお、新型コロナウイルス感染症が蔓延している時期に、脳卒中の診断を受けた患者さんと脳卒中を疑われたものの脳卒中ではなかった患者さんを比較した研究があります。脳卒中の診断を受けた患者さんの方で、新型コロナウイルス陽性であった人が圧倒的に多く、この結果を統計処理して、新型コロナウイルス感染症であることが、脳卒中を発症させる一因となることを示しています。さらに研究を要しますが、このことからは、「新型コロナウイルス感染症は脳卒中を起こしやすい」といえることになります。

Q.脳卒中を疑った場合、これまでのように救急車を呼んでよいでしょうか?脳卒中疑いで救急車を呼ぶと、搬送先の病院で新型コロナウイルス感染症にかかるのが心配です。

A.脳卒中は発症早期の治療によって、命を救い後遺症を軽減できる可能性が高くなるので、救急車を呼ぶことが勧められています。

新型ウィルス感染症が流行してから、感染を警戒するあまり、脳卒中を発症した患者さんや家族が救急車を呼ぶタイミングが遅くなることや、病院受診自体をあきらめてしまうことが増えていると、日本を含む世界各国で報告されています。

そのような中で、世界中の脳卒中を診療する医師の間で「新型コロナウイルス感染症流行中でも安全に脳卒中の治療を受けられるようにしたい」という機運が増しており、受診した患者さんや家族の感染予防対策にも力を入れています。

まずは、これまで通り、脳卒中を疑ったらすぐに救急車を呼んでください。懸念される濃厚接触のリスクは、ご本人だけでなくご家族もマスクを着用されると低減できます。

Q.脳卒中疑いで救急車を呼ぶ際、新型コロナウイルス感染症を考慮して、どのようなことを伝えれば良いでしょうか?

A.新型コロナウイルス感染症にかかりやすい状態、状況にあったかをお伝え下さい。

救急車を呼ぶ際には、脳卒中を疑う症状(顔や腕の片側の麻痺や言語障害など)がいつからあるのか、ということに加えて、1週間以内に、発熱、咳嗽、倦怠感、呼吸苦、下痢、味覚障害、嗅覚障害の症状がなかったか、新型コロナウイルス感染症疑いの人と2週間以内に接点があったか、感染流行地域への2週間以内に行ったことがあるか、についても、分かる範囲でお伝えください。

Q.医療崩壊が心配されていますが、現在も通常通りの脳卒中診療を受けられるのでしょうか?

A.新型コロナウイルス感染症が蔓延する中でも、脳卒中診療を担う医療機関はその対策に最善を尽くすよう努力しています。

院内感染やスタッフへの感染を防ぐために、患者さんの受診時の感染スクリーニング、スタッフの感染防護、診察室や医療機器の消毒と換気、治療チームの特別編成等をしています。このため、病院到着から診断・治療開始までの時間が従来よりも長くなる場合や、従来受けられていた検査や一部の治療が受けられない場合がありますので、ご理解をお願いします。

Q.脳卒中の既往がある患者さんがコロナウイルスに感染するとどのような影響がありますか?

A.脳卒中の既往がある患者さんは、一般の方々よりも新型コロナウイルス感染症が重症化しやすいといわれています。

酸素吸入が必要になる割合、集中治療室での治療が必要となる割合が、一般の方々よりも高いといわれています。また、脳卒中を防ぐために内服している薬が、感染症自体や感染症に対する治療薬などの影響を受けて、効果が不安定となることもあります。脳卒中の患者さんが発熱や呼吸器症状などに対して医療機関で薬の処方を受ける際には、必ず日ごろ内服している薬の内容 (「お薬手帳」など) を提示してください。

また、感染により脳卒中の後遺症が悪化することもあり、その場合脳卒中の再発と区別がつきにくいことも少なくありません。脳卒中の後遺症の悪化に気づかれた場合は、すぐに脳卒中の専門病院を受診してください。

Q.脳卒中の既往がある患者さんに対してはどのような注意が必要ですか?

A.脳卒中の既往がある患者さんは、一般の方々よりも免疫力や体力が弱っていると考えられます。

脳卒中の既往がある患者さんは、一般の方々よりも感染しやすく、感染した場合に重症になり易い可能性があります。発熱や呼吸器症状など感染の可能性がある人、感染の可能性がある人と接触した人は極力脳卒中の患者さんと接触しないでください。家族に脳卒中の患者さんがおられる場合は、日ごろから手洗いやうがいの徹底、マスク着用などを心がけ、万一発熱などの症状を認めた場合は早めに医療機関を受診してください。

Q.診察や薬はどうしたら良いですか?

A.脳卒中は再発(もう一度脳卒中を起こされること)を含めた予防は、生活習慣の是正はもちろんですが、お薬を継続して服用することが大切です。一部のお薬は中止することで脳卒中を発症する危険が高くなることもあります。

新型コロナウイルス感染症の流行状況次第では、かかりつけの医院・病院への通院が難しくなる場合も考えられます。急な流行状況の変化によって診療情報提供書(他の医院・クリニックに患者さんの病状、治療内容を記載した手紙)をもらえないこともあるかと思いますので、「お薬手帳」など飲まれているお薬の情報を用意しておきましょう。急に普段と違う医院・病院の受診が必要な時でも、いつもと同じ内容のお薬を処方いただけると思います。

「お薬手帳」の取得が難しい場合は、今飲まれているお薬の表と裏を写真にとって、その飲み方をメモしておくと良いかも知れません。もし可能なら清潔にしたテーブルなどにお薬をシートから出した状態も撮影いただくと、より確実にお薬の内容をわかっていただけると思います。

さらに後遺症がある患者さんはリハビリテーションの継続も重要です。外来通院リハビリテーションを行なっている方は、自宅でできるリハビリテーションについて聞いておくと良いでしょう。

また、医院・病院によっては電話再診で医師が状態を確認し、お薬を処方することもできます。全ての医院・病院で行なっているわけではありませんので、かかりつけ医院・病院にご確認ください。

Q.インフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行するかもしれないといわれていますが、どのように対応するとよいでしょうか?

A.脳卒中の既往がある患者さんは、一般の方々よりもインフルエンザも重症化しやすいといわれています。予防が重要です。

インフルエンザも新型コロナウイルス感染症も飛沫感染が主体である点は似ていて、予防の方法も似ています。感染を予防するためには、手洗い・うがいをしっかりすることが大切です。手洗いは、外出後だけではなく、可能な限り、頻回に行いましょう。石けんを使って最低15秒以上行い、洗った後は清潔なタオル等で水を十分に拭き取りましょう。

また、ウィルスは粘膜を通して感染することが多く、極力鼻や口などを触らないようにしましょう。マスクも正しく活用しましょう。 また、脳卒中の既往がある患者さんが季節性ンフルエンザのワクチン接種を受けることによって、脳卒中の再発をある程度予防でき、死亡リスクが低下することも分かっています。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の初期症状は似ています。発熱、寒気、頭痛、筋肉痛、咳、鼻水などの症状を自覚したら、速やかにかかりつけの医院・病院に相談して、指示に従いましょう。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症による症状か、そのほかの原因によるのかを判断して対応する「発熱外来」を準備している医療機関も増えています。普段から確認しておくと、万一の時の適切で速やかな対応につながります。