ブレイン・アタック プロジェクトについて

趣旨および目的

 画像診断機器の進歩や新しい血栓溶解薬の開発に伴い、脳卒中発症早期の専門的治療によってその予後を大幅に改善できるようになった。しかしながら発症早期の専門的治療を普及させるには、一般市民の方への啓発、医療機関の受け入れ体制の整備、効率的な脳卒中患者の救急搬送システム及び診療ネットワークの構築が必要である。

 脳卒中の予防や初期治療に関する一般市民の方への啓発については、一般市民の方が脳卒中に対してどのような認識を持っているかという現状を明らかにし、脳卒中の症状の理解と発症時の迅速な専門医療機関への受診を呼びかけるキャンペーンを行う必要がある。また、啓発キャンペーンについては、新聞、テレビ、ラジオ、ポスター、パンフレットなど様々な手法があるが、これらのキャンペーンの有効性について検証し、より有効なキャンペーン戦略を立てる必要がある。

 加えて、脳卒中救急搬送システムについては、救急隊員による脳卒中患者のスクリーニングや搬送システムは国内の各消防本部で様々であり、t-PA静注療法実施可能な医療機関は明らかにされていない。

 本プロジェクトの目的は、1)一般市民の方の脳卒中の知識の実態を明らかにし、2)一般市民の方を対象とした脳卒中に関するキャンペーン活動を行い、3)キャンペーン効果を評価し、4)脳卒中救急搬送システム及び医療機関の受入体制の実情と課題を明らかにし、5)脳卒中発症2時間以内の脳卒中専門医療機関へのアクセスを全国的に可能とすることである。

平成19年度までの実績

 平成18年度に、秋田市、静岡市、呉市において、40歳以上75歳未満の男女、約6千人を対象に、脳卒中の危険因子、発症時の症状および対処法、情報源に関する郵送アンケート調査(多項目選択式)を実施し、以下の現状が明かになった。

・危険因子:高血圧や高脂血症(脂質異常症)は良く知られているが、それに比べて、糖尿病や不整脈はあまり知られていない。

・症状:手足の麻痺や言語障害についての知識は普及しているが、視野障害といった余り馴染みのない症状については理解度が低い。約半数の人が誤って「両手指の痺れ」を脳卒中の症状と理解しており、「突然」「片側で」という特徴が十分に理解されていない。

・発症時の対応:大部分の人が救急対応の必要性を認識している。

・情報源:テレビや新聞が重要。

 脳卒中の症状及び発症時の迅速受診の必要性について知識の普及を図るべく、平成18年7月から全国的に新聞広告を用いたキャンペーン(公共広告機構支援キャンペーン)を実施している。加えて、秋田市と呉市のモデル地区については、ちらし・小冊子を全戸配布し(秋田は頻回、呉は数回)、市民講座を開催した。

 脳卒中救急搬送システムの実情調査については、平成19年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)「超急性期脳梗塞患者の救急搬送及び急性期病院受け入れ体制に関する実態調査研究」に盛り込まれたため、同研究班への協力によって実現を図った。

平成20年度の事業内容

1.脳卒中啓発キャンペーン

 上記新聞キャンペーンを平成20年6月まで継続し、平成20年7月から、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4メディアによるキャンペーンを公共広告機構の支援のもとに開始した。加えて、秋田市と呉市のモデル地区については、平成20年4月までパンフレットの全戸配布、市民講座などによる市民啓発活動を継続した。

2.脳卒中啓発キャンペーン効果の評価

 平成20年5-6月、秋田市、静岡市、呉市の住民を対象に、再度、脳卒中の危険因子、発症時の症状および対処法、情報源に関する郵送アンケート調査を実施した。今後、各地域における知識改善度を比較することによって、新聞のみによる啓発(静岡)と、新聞に加えて、ちらし・小冊子の配布、ポスター掲示、市民講座などを上乗せした場合(秋田、呉)のキャンペーン効果を比較検討する。

3.脳卒中救急搬送システムの実情調査

 救急隊および救急本部を対象とする調査については、厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)「超急性期脳梗塞患者の救急搬送及び急性期病院受け入れ体制に関する実態調査研究」が実施する全国調査に協力する。

 加えて、脳卒中急性期医療を行なっている医療機関を対象に、t-PA静注療法実施の有無を調査し、一定の基準を満たし、公表の同意が得られた医療機関を日本脳卒中協会のホームページにおいて公表する。